A Choral Suite "Bun'ngaku-e (To Literature)"

 for Female Chorus and Piano

合唱組曲「文学へ」

 同・女声合唱版(ピアノ伴奏)

Text and Music by Kentaro Sato (Ken-P)

作詞・作曲 佐藤賢太郎(Ken-P)

Female Chorus ver. SMA (同・女声版)

Please contact the composer for digital score with phonetic transaltion.

Printed Score coming soon! 製本版楽譜近日発売予定!

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 1. 朝の藤棚 (Asa-no Hujidana)

 2. ぼうず (Bōzu)

 3. 旅に (無伴奏)

 4. 君が見た空 (Kimi-nga Mita Sora)

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 coming soon!

Text/歌詞

日本語詩 / Japanese Lyrics

春は、あけぼの。
やうやう白くなりゆく山ぎは
少し明りて、

紫だちたる雲の細くたなびきたる。

清少納言「枕草子 第一段」冒頭より

1.朝の藤棚

春の夜明けを愛する人がいた
空が少しずつ白くなっていくこの時や
遠くの山々によりそい 
優しく愛でる あの紫の雲を愛したという

その人は きっと この藤の花も愛するに違いない
春の夜明けに朝の涙を抱いて光る
この薄紫の花を きっと
この朝によりそう地上の雲を きっと

_______

 

12世紀から13世紀にかけて藤原定家が編纂した、 とされる「小倉百人一首」
素晴らしい和歌がおさめられている、らしい。

いつか! いつかきっと全ての歌を覚えて…

 みんなー! 坊主めくりやるよー!  はーい!

2.ぼうず

ぼうず!
十三人のぼうず! 
一割三分のぼうず!
十二人の僧侶に「蝉丸」を合わせた 十三人のぼうず! 
一割三分のワナ!

二十一人の「ひめ」
女流歌人よ さぁ、出てこい!
あぁ! また ぼうず!

十三人のぼうず! 
一割三分のぼうず!
そして、ひめ!
女流歌人のひめさまたち!
お願いだから今度は 恥ずかしがらずに 出てきて!

あぁ! どうでもいい札がでた!
素晴らしい歌人のみなさん!
ごめんなさい! 今だけは出てきちゃダメ!

ぼうず!
十三人のぼうず! 
一割三分のぼうず!
ぼうず!ひめ!
お願いだから最後は 勝利の女神よ 出てきて!

あぁ! 最後は蝉丸!

_______

 

元禄七年、十月八日の夜。
病床の芭蕉先生は、
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る という句をお読みになられた。
その後、私に「なおかけ廻る夢心」というのも考えたが、どちらが良いか?とお尋ねになられた。
あの時、私は先生のお体のことを考えて「では、上の句はどうなるのでしょう?」と伺えなかった。
先生は、どうお考えになられていたのだろう?

各務思考「芭蕉翁追善之日記」より

3.旅に

旅に病で
夢は枯野をかけ廻る
なをかけ廻る夢心
旅に病で…

_______

あどけない話

智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、

切つても切れない むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは

うすもも色の朝のしめりだ。

智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出てゐる青い空が 智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。

光太郎さん? これ、私のためにかいてくれたの?
…うーん、でも光太郎さん?これじゃ、女心は動かないわよ
じゃあ、どうすればいいかって?

そうね…。私ならこうするわ

4.君が見た空

いつか君は言ったね
ここには空がない、って
ぽつりと君は言ったね
ほんとの空がみたい、って

僕は 驚いて空を見た
桜の若葉の間から見えるのは
僕が知っている いつものきれいな空
地平には薄桃色の朝の吐息

遠くを見つめて 君は僕に言ったね
故郷の山の上に広がる青い空が 私のほんとの空よ、って

ふと思い出した君との思い出
あどけない空の話
なんでもない二人の思い出

遠くを見つめて 君は僕に言ったね
故郷の山の上に広がる青い空が 私のほんとの空よ、って

遠くを見つめた君の手を優しくひいて
君の故郷と心に大きく広がる青い空を見に行こう
感じてみたいんだ 
君が見た空を
君の心の空を


English Translation / 英語訳

coming soon!

Program Note (JPN Only) / プログラムノート

「文学へ」によせて (初演時のプログラムノートより)

 私は、女声合唱作品には、今までラテン語や英語の作品を書く機会には恵まれていたのですが、日本語の組曲を作曲したのは今回が初めてになります。2008年に帰国して以来、多くの女声合唱団やお母さんコーラスの方々から、ぜひ日本語の組曲を!という声は多く、今回、創作の機会を与えてくださったことを、舫の会の皆さんにまず御礼申し上げます。

 さて、今回の委嘱曲である女声合唱組曲「文学へ」は、女声三部合唱のための四楽章構成、ピアノ伴奏付き、日本語合唱組曲です。組曲の題名のとおり、「文 学」を主題とした作品となっています。「文学」といっても、文学作品を歌詞として使った、というわけではなく、私が選んだ4つの日本文学作品とその世界観 や思い出を基に、自由に創作または再構成した自作詩が歌詞となっています。それぞれの楽章をより楽しんで頂くために、曲の導入として(オプションですが) 短い朗読パートが入っています。音楽や歌詞だけでなく、その基になった文学作品や雰囲気全体を楽しんでもらえたら嬉しく思います。

 第一楽章「朝の藤棚」は、平安時代を代表する女流作家・歌人である清少納言(c966-c1025)の随筆「枕草子」の第一段の冒頭を基にした楽章です。私は、第一段全文を高校一年生のときNHK全国放送コンテスト朗読部門のテキストとして読んでいます。「春は曙(が良い)」という清少納言の言葉に共感する人がいたとしたら?そんな想いが、ゆったりと4拍子にのせて歌われていきます。
 第二楽章「ぼうず」は、鎌倉時代初期の歌人・藤原定家(1162-1241) が編纂したとされる和歌集「小倉百人一首」を題材とした楽章です。皆さんの中には、全ての和歌を暗記しようと頑張った方もいらっしゃるでしょう。私のよう に全然ダメだった方には、和歌よりも「坊主めくり」の印象が強いかもしれません。リズミカルなピアノの打音に乗せた、坊主めくりをお楽しみください。
 第三楽章「旅に」は、江戸時代を代表する俳人・松尾芭蕉(1644-1694)が最後に読んだ句に関して弟子の一人だった各務支考(かがみしこう)が残した回想を基にした楽章です。作品が完成する前の「推敲」の想いや悩みが、ピアノの前奏に続き、無伴奏曲として楽曲が静かに展開されていきます。
 第四楽章「君の見た空」は、彫刻家・画家であり詩人でもある高村光太郎(1883-1956)が、妻・智恵子の死後に出版した詩集「智恵子抄」に収録されている詩「あどけない話」を基にした楽章です。夫・光太郎ではなく、妻・智恵子の「想い」を自由な発想でまとめたラブソングが組曲の最後を締めくくります。

 文学の喜びとは、謎解きの楽しさ、追体験の充実感、その世界を通して広がった自己の心にはせる想いへの喜びだったりします。文学も、音楽と同じで、それは 決して紙の上での黒い記号ではなく、それぞれの人の心の中で躍動しているものです。そんな色彩豊かな世界が、本楽曲を通して、より立体的かつ楽しく皆様の 心に広がれば幸いです。

about the Commission and the Premiere

 The work was commissioned by "Moyai-no Kai ( Japan)" and premiered on 8/4, 2013 by Shinsuke Kishi (Conductor), Minoru Igarashi (Piano), Yumi Kanagawa (Narration) & A Joint Choir: Urawa Female Chorus, Gloria Female Chorus, Femel Chorus "Sirabe", Hamamtsu Frauen Chor, PaAPa, Rosa Mariano (Tokyo, Japan).

委嘱・初演に関して

 この作品は「舫(もやい)の会」の委嘱作品です。初演2013年8月4日「舫の会 第11回演奏会」にて行われました。

 指揮・岸信介、ピアノ・五十嵐稔、朗読・金川裕美、演奏・舫の会合同合唱団(浦和女声合唱団、グローリア女声合唱団、女声合唱団「調」、浜松フラウエンコール、ぱ・あ・ぱ、Rosa Marian)